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コラム

JMAの経済ニュース(2021年6月17日)

本コラムでは、世の中で起こっている経済トピックスの中から当委員会の解釈で解説しています。

マクロ経済の視点からミクロのM&Aを始めとする経営活動にお役立ていただきたく掲載しているものです。

掲載している内容については、当委員会で知りえた情報に基づいた見解であり、

利用者個人の責任においてご判断下さるようお願いいたします。

ジャパンM&Aソリューション株式会社
JMA経済トピック製作委員

 

大規模PCR検査に意味はあるか?

 

ワクチン接種率の向上が経済の回復である

各国のGDP成長率をみると、ワクチン接種が進んでいる国についてはコロナ前の水準に戻りつつある。中国に関しては国としての対策が功を奏し、早々にコロナの影響を脱しているのがGDP成長率から読み取れる。日本においては「ワクチン後進国」と揶揄されているように、集団免疫を獲得するワクチン接種率まで至っておらず、依然として日本の経済はコロナ前の水準への回復まで時間がかかりそうである。

ワクチン登場前まではPCR検査を数多くすることにより、無症状の陽性者を見つけ出し早めに隔離し感染を防止するという論調があった。その点につき考察していきたい。

 

PCR検査への願望

 日本でもワクチン接種が徐々に進み始め、全く出口が見えなかったトンネルにも出口はあるのだという希望は持てるようになってきた。とはいえ、ワクチンは万能ではないし、接種の普及率もまだまだ低く、集団免疫が実現するようなレベルには程遠いのも事実だ。 

 その意味では感染の蔓延をできるだけ予防することは引き続き極めて重要だ。マスク、手洗い、ソーシャルディスタンス等に加えて、よく言及されるのがPCR検査だ。今も昔も、感染症を抑制する要諦は「感染者を見つけ出して隔離する」ことであり、PCR検査はその切り札だと考えられている。できるだけ広範囲に、「いつでも、誰でも、何度でも」制限なく検査を行うのが理想的だと主張する人も多い。

 

実は当てにできないPCR検査

 しかし、大規模なPCR検査には大きな落とし穴がある。検査の目的が、感染者を見つけ出して隔離することであるなら、控え目に言っても、実は極めて効率が悪い方法だ。

 一般的な理解は次のようなものだろう。検査対象者の中に100人の感染者がいるとして、検査の感度が80%なら、1回の検査で80人の陽性者と20人の偽陰性者が出る。再度検査すれば、擬陰性者は4人(20×0.2)になるし、さらに3度目の検査で、偽陰性者は0.8人にまで減る。複数回の検査を行うことで感染者を確実に絞り込むことができる、と。

しかし、事実は以下の通りだ。無差別に多数の人を対象にPCR検査を行うと、陽性になった人(陽性者)のうち、実際には感染していない人(擬陽性者)の方が、感染している人(陽性の感染者)よりもはるかに多くなってしまう。しかも、さらに検査を繰り返しても、擬陽性者を減らすことはできないし、偽陰性者(検査の網を潜り抜けてしまう感染者)も減らない。つまり、感染者を見つけ出して隔離するために広範なPCR検査を行うことの効果には疑問符が付くのである。

 

感染者より多くなる擬陽性者

こうした意外な結果になってしまう原因は、新型コロナの市中感染率が極めて低いことだ。例えば、1日あたりの新規感染者数が4千人、1人あたりの平均感染期間が15日間だとすると、市中には平均すると6万人の感染者がいる。総人口12,600万人に対する比率(市中感染率)は0.048%(6÷12600)と低い値になる。

そこで、次のような試算をしてみる。感度(感染者のうち陽性と判定される人の割合):0.8、特異度(非感染者のうち陰性と判定される人の割合):0.999、市中感染率:0.1%と置く。ちなみに、偽陰性率:(1-感度)、擬陽性率:(1-特異度)である。

無作為に選んだ10万人を対象にPCR検査を行うと、感染者100人のうち陽性者が80人、偽陰性者が20人となる。また99,900人の非感染者のうち、99.9人(99,900×(10.999))が擬陽性者となる。陽性と判定される人は、179.9人(8099.9)で、うち実際に感染している人の割合は、80÷(8099.9)=44%と、半分にも満たない。

 

検査を繰り返しても結果は改善しない

全員に再度、PCR検査を行うとどうなるか。陽性判定されていた感染者80人については、64人(80×0.8)が陽性()16人が新たに擬陰性()となる。また、偽陰性者20名のうち16名が陽性()4名が再び偽陰性()と判定される。一方、非感染者なのに陽性(擬陽性)と判定されていた99.9人については、再度陽性と判定される人は0.0999(99.9×(10.999))()、正当に陰性と判定されるのが99.8001(99.9×0.999)()になる。しかし、陰性判定を受けていた非感染者99,800.1人の中から、新たに99.8001人(99,800.1×(10.999))の擬陽性者()が出てしまい、改めて陰性が確認されるのは99,700.2999(99,800.1×0.999)()となる。

結局、2度のPCR検査によって、陽性感染者は80(①+③)、擬陽性者が99.9(⑤+⑦)、偽陰性者が20(②+④)、陰性非感染者が99,800.1(⑥+⑧)という結果が得られる(合計はちょうど10万人になる)。2度の検査を行っても、陽性者のうち実際に感染している人の割合はやはり44%のままであり、検査をすり抜けてしまう感染者(偽陰性者)は20人と、これも1度の検査の結果と変わらない。ちなみに、3度のPCR検査を行っても、全く同じ結果であることも確認できる。「PCR検査を何度も繰り返せば、市中の感染者を漏れなく捕捉できるはずだ」という常識は見事に裏切られるのである。

 

何のためのPCR検査なのか

PCR検査の目的は何か。感染抑制の要諦は、あくまで「感染者を見つけ出して隔離すること」だ。しかし、擬陽性率が0.1%(非感染者を陽性だと誤認してしまう可能性が1,000分の1)だとしも、市中感染率も0.1%(1,000人に1人)であれば、無差別の10万人に対する検査の結果は、感染者と擬陽性者がそれぞれ100人いることになる。市中感染率がより現実に近いと思われる0.05%程度で、検査の感度が80%程度に止まるのであれば、見つけ出せる感染者は40人に下がり、擬陽性者100人はその2.5倍になってしまう。

しかも検査を重ねても、発見できる感染者の数は変わらない。判定が陽性→偽陰性、偽陰性→陽性を繰り返すからだ。そして、発見できた感染者を大きく上回る擬陽性者が出続けるのだ。「感染者を見つけ出すためのPCR検査」としては役に立たないと言わざるを得ない。

では、「安心を得るためのPCR検査」には意味があるか。つまり、検査で陰性になれば感染していないと言えるのか。先の試算結果では、誤って陽性判定を受ける非感染者が当初は100人程度出ても、もう1度検査すれば、ほぼ全員が陰性になる。しかし感染者については、検査を何度繰り返しても、偽陰性者の総数は減らない。結局、陰性判定を受けた人が非感染者であれば問題ないのだが、感染者である場合には、複数回検査を重ねても、一定の比率(1-感度)で偽陰性者が出てしまう。検査で陰性になったからといっても、感染していない保証にはならないのだ。

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