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JMAの経済ニュース 「格差」を考える(2022年10月3日)

本コラムでは、世の中で起こっている経済トピックスの中から当委員会の解釈で解説しています。

マクロ経済の視点からミクロのM&Aを始めとする経営活動にお役立ていただきたく掲載しているものです。

掲載している内容については、当委員会で知りえた情報に基づいた見解であり、

利用者個人の責任においてご判断下さるようお願いいたします。

ジャパンM&Aソリューション株式会社
JMA
経済トピック製作委員

以下の文章は、本コラム制作委員の1人が10年以上前に検討したものだ。今でもほとんどそのまま通用する(つまり世の中が全く変わっていない)ことに驚くとともに、残念に思う。

 

経済を活性化させるには競争が不可欠

 日本経済を活性化させるには、その経済を動かしている企業と個人が活性化しなければならない。そのために最も手っ取り早く効果的な方法は「競争」することである。しかし、競争は必然的に勝者と敗者をつくり出す。さらに厄介なことに、今日の敗者が明日の勝者になるというような、勝者と敗者が固定化されないケースはそれほど多くないだろう。つまり、競争が激しくなるほど格差が生じ、それが拡大する可能性が高いということだ。

 しかし経済を活性化させようと言うなら、格差の拡大を恐れてはいけない。規制緩和を進め、活きのいい新規参入者を増やして競争を加速させるべきである。結果として生じる格差(の拡大)は「生じた後で」必要なら是正すればよい。格差(の発生)そのものを否定してしまうと、皆で手をつないで、いちばん足の遅い人に合わせて進みましょうということになる。「みんな一緒」ということを優先するならそれでいい。しかし、速く進みたいのなら、速く走れる人にはそうしてもらって、全体の平均速度を上げるべきだろう。

 最近目立つ議論は、経済が活性化するのは望ましいが、格差が拡大するのは困るというものだ。たとえばサラリーマンが、のんびり仕事をして給料はたくさん欲しいと望むようなもので、虫がよすぎると言うほかない。

 

世界には通用しない「日本的なほどほど」

 以上のような議論がすんなり受け入れられる国や企業は、世界を見渡せば少なからずあることだろう。しかしわが日本では、もちろんさまざまな意見はありうるのだが、それを支持する意見が多数説ではないという気がする。「競争、競争に明け暮れるような、そんなぎすぎすした社会で暮らすことが本当に幸せか」と考える人の方が多そうだ。

 「日本的な」目標とは、中国のような高成長はいらない、米国のような繁栄の中の貧困が目立つ社会も困る、緩やかながらも着実な経済成長が実現していて、格差はあってもそれほどひどくはなく、しかも弱者に手を差し伸べる仕組みはちゃんと用意されている、そんな社会にしたいといったところだろうか。

 しかし、世界経済の成長を牽引している新興諸国は、われわれがそんな「三代目のぼんぼん」のような考え方でいるのを見たら、これ幸いと追い抜いていくことだろう。まだまだ貧しく、したがって上昇志向の強い彼らとの競争をはじめから回避しているようでは、そこそこの成長すら覚束ないに違いない。

国内に目を向けても、われわれが直面している少子高齢化の問題は、よほど褌を締めてかからないとうまく対応できない。ジリ貧の結果に陥りたくなければ、格差の拡大くらいは辞さない覚悟が必要だろう。

 

減点主義の弊害

 競争と言っても、いったい何の競争をするのだろうか。それは決して長時間労働を競うという意味ではないはずだ。他人と、他社と、他国と競うのは知恵の勝負である。新しいアイデアを出し、新しいやり方を考えて、結果(アウトプット)の付加価値を高めることが重要である。

 その観点から懸念されるのは、われわれが「減点主義」のメンタリティを強く持っていることである。たとえば組織の長が交代する際に、前任者に多い挨拶は、「皆様方のおかげで大過なく務めることができた」といったものであり、後任者に多い挨拶は、「前任者の遺産を損なうことなく、守り発展させていきたい」というものである。要するに失敗をしないことが大事なのであって、過去を否定して物事を大きく変えてしまうことを嫌う空気があるのではないか。

 総人口が減少に転じ、人口構成の少子高齢化が進むわが国は、変化を起こさなければジリ貧の道を歩むほかない。構造改革(規制緩和と財政改革)はその流れのなかに位置づけられるものである。

 

格差是正の方策

 さて、日本経済がジリ貧に陥らないように活性化の努力を傾ける過程で、格差の拡大はどうしても進まざるをえないだろう。そして、その格差を全面的に否定することは公平さを著しく欠くし、経済の活性化そのものを損なう結果に追い込むだろう。

 したがって、望ましくない格差は、事前に回避できるならそうすべきだが、格差の発生を恐れるあまり競争を制限しすぎたり、変革の動きを阻止してしまったりしないようにすべきである。そして結果として生じた格差は、公平さを損なわない範囲で是正すればよいのである。

公平さを損なわない格差の是正には、一例を挙げれば「相続税率の引き上げ」がある。自ら築いたわけでもない財産を低い税率で相続できる状況を許すと、格差を固定化させてしまうことに繋がる。公平の観点から問題があるし、経済の活性化を損なう可能性もあるだろう。

 あるいは、消費税率の引き上げも正当化できると思われる。高齢化が進むと、格差はフローの所得よりもストックの財産で先鋭化する。その意味で担税力を測る物差しとして、所得だけでなく資産も考慮すべきだろう。所得や資産が多い人の方が多く消費するであろうから、消費への課税は公平な徴税の仕方だと言える。消費税率を引き上げる分、所得税率や法人税率を抑制すれば、経済を活性化させることに貢献するだろう。

 ただし、税率を引き上げる際には、できるだけ公平さを損なわない配慮が必要である。消費税率の引き上げにあたっては、インボイス方式を導入するとか、生活必需品への減免措置を導入するといったことも十分に検討すべきだろう。

 いま最も問題な格差は、低所得の人たちがあまりにも多いことだろう。相続税率や消費税率を引き上げても、この格差の改善には即効性はなさそうだ。必要なのは企業が付加価値(賃金と利益の合計)をもっと増やして、所得水準自体を底上げすることだ。そのうえで機会を獲得する際の格差は小さくする一方、結果の格差は受け入れることが必要なのではないか。

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