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JMAの経済ニュース 少子化は止めようのない不都合な真実(2022年2月3日)

本コラムでは、世の中で起こっている経済トピックスの中から当委員会の解釈で解説しています。

マクロ経済の視点からミクロのM&Aを始めとする経営活動にお役立ていただきたく掲載しているものです。

掲載している内容については、当委員会で知りえた情報に基づいた見解であり、

利用者個人の責任においてご判断下さるようお願いいたします。

ジャパンM&Aソリューション株式会社
JMA経済トピック製作委員

 

少子化は止めようのない不都合な真実

 

人口は年齢構成の変化が問題

わが国の人口を巡る最大の問題は、総人口が減少していること自体ではなく、年齢構成が急激に変化していることだ。今後も少子高齢化が一段と進行しそうなのである。国立社会保障・人口問題研究所(以下「社人研」)の推計によれば、2040年時点で15歳未満の子ども人口の比率が10.8%(2020年は11.9%)、1564歳の現役人口が53.9%(同59.2%)、65歳以上の高齢者人口が35.3%(同28.9%)になる。
1人の現役世代が支える「子ども・高齢者」の人数の比率を見ると、2020年の(11.928.9/ 59.20.689倍に対し、20年後の2040年には(10.835.3/ 53.90.855倍になる。現役1人あたりの負担が24.1%(0.8550.6891.241)も増加する。
もっとも2040年を過ぎると急激な変化にブレーキがかかり、2050年頃からは安定した状態が続くと見込まれている。2065年には高齢者が38.4%、現役が51.4%、子どもが10.2%程度で落ち着くとの見通しだ(社人研)。とはいえ、その段階では現役1人が支える高齢者と子どもの比率は0.946倍だから、現在と比較すれば負担は37.3%(0.9460.6891.373)も増える。「落ち着くから大丈夫」とは、到底言えない状況だ。

合計特殊出生率とは

現役世代の負担増加を少しでも和らげるには、この世代の人口を増やす必要がある。そのためには、これから生まれてくる子どもの数を今から増やしておくことが欠かせない。合計特殊出生率という概念がある。これは周知のように1人の女性が生涯に産む子どもの数のことだが、以下の式で表せるという。

合計特殊出生率=(1-生涯未婚率)× 夫婦の完結出生児数

生涯未婚率は、50歳の時点で未婚である人の割合だ。50歳以降に結婚して子どもをもうける人の割合が極めて低い事実から、人口問題を考える上で使われている指標だ。合計特殊出生率の統計も、1549歳までの女性が産む子どもの数を対象にしている。50歳以上で妊娠する女性の数は極めて少ないという事実を反映しており、整合的だ。ちなみに2019年の生涯未婚率は男性が23.4%、女性が14.1%となっている。
一方、夫婦の完結出生児数とは、結婚持続期間が1519年の夫婦の平均出生子ども数のことで、夫婦の最終的な平均出生子ども数だとみなされている。この数字は、半世紀も前の1972年に2.20だったが、その後も横ばいで推移し、2002年が2.232005年に下がって2.092010年には初めて2を割って1.962015年が1.94となっている(毎年調査されているわけではない)。概ね2近辺で推移してきたと言えそうだ。
総人口を一定水準に保つために必要な合計特殊出生率は2.072.08だとされているが、日本の水準は2020年で1.34だ。少子化を改善するためには子どもの数を増やす、つまり合計特殊出生率を引き上げることが必要だ。前述の式から、完結出生児数が比較的安定していると考えれば、生涯未婚率を引き下げないと出生率を上げることはできないと読める。

 

急増する生涯未婚者

以前は男女とも生涯未婚率は低く、男性の未婚率が5%を超えたのは1990年のことだ。そのあたりから急上昇を始めて、2000年に10%を、2005年には15%を超え、2010年に20%に達した。2015年の水準は23.4%だ。女性の方は遅れて2000年に5%を超えてから明らかに上昇し始め、2010年に10%を超え、2015年には14.1%となっている。
一般に未婚率は男女とも20代後半に比べて30代前半に顕著に低下し、30代後半にはさらに低下するが、40代になるとほとんど低下しない傾向が見られる。つまり40代になる前に結婚していない人は、その後も結婚しない可能性が高いということだ。最近の生涯未婚率(つまり50歳を迎えた人たちの未婚率)の上昇も、20代や30代のうちに結婚しなかった人が急増してきたことを反映していることになる。
生涯未婚率が急上昇したのは19902015年だから、対象となるのは19401965年生まれの人たちだ。この人たちが25歳になるのが19651990年、40歳になるのが19802005年だ。その間の景気の局面は様々だから、経済成長率が高いか低いかということと未婚率との間に有意な関係を見出すのは難しい。何か別の理由が20代、30代での未婚率を押し上げたのだろう。社人研の推計によれば、2040年には男性の生涯未婚率はさらに上がって30%程度、女性は20%程度になるだろうという。

 

少子化が止まらないことは分かっている

どうやら生涯未婚率を引き下げて合計特殊出生率を引き上げるのは難しそうだ。それどころか、そもそも仮に何らかの方法で合計特殊出生率の低下を食い止めることができたとしても、実はそれでも少子化を止めることはできない。子どもを産む年代の女性の数が減少することがすでにわかっているからだ。
2019年の1549歳の女性人口は2,5124千人、同年の034歳の女性人口、つまり15年後(2034年)の1549歳人口に相当する女性たちは1,9674千人だった。1549歳の女性人口は今後15年間で実に21.7%も減少するのだ。母体になりえる女性の数が減れば、仮に合計特殊出生率を不変に維持できたとしても、生まれてくる子どもの数も母体数と同様に減少する筋合いだ。それでも出生数を減らさないでおくためには、合計特殊出生率を非現実的な水準にまで引き上げる必要があることになる。
したがって、どう考えても今後の少子化を止めることはできないのが現実だ。不可能なことを可能だと「根拠なく楽観する」のではなく、少子化が進むことを前提にして、社会のあり方をその状況にどう対応させるかを考えるべきであろう。

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