【成約事例】ハンバーガーショップがコメダ傘下に入れた理由(譲渡企業インタビュー)

- 飲食業
2024年10月、ジャパンM&Aソリューション株式会社の仲介により、三義総業株式会社の運営する飲食店「ハンバーガー&サンドイッチ ベイス」とコメダホールディングスの子会社であるコメダコマースのM&Aが締結されました。ベイスは当時1店舗のみの個人店、コメダホールディングスの傘下に加わるとは夢にも思わなかったそうです。オーナー経営者の今井義博さんに創業から譲渡までの経緯についてお話を伺いました。
譲渡企業情報
会社名:三義総業株式会社
事業内容:ハンバーガー&サンドイッチ ベイスの運営など
Q:会社の成り立ちからお話しください。
A:約3年半前、高校時代の後輩が経営していた飲食店を買わないかという相談を受けました。その店舗がベイスです。ベイスは「大人の秘密基地」をコンセプトにしたハンバーガー&サンドイッチショップで、オールドアメリカンな雑貨で囲まれたおしゃれな雰囲気が特徴のお店です。
メインメニューには、ボリュームのあるハンバーガーと野菜がたっぷり入ったヘルシーなサンドイッチがあり、アメリカのデリバリーサンドイッチ店を見て日本に持ち込んだのだそうです。味も店の雰囲気も良い店でしたがコロナの影響で経営が行き詰まり、事業を引き継ぐ相手を探していたのです。
話を受けた当初。私自身、経営の大変さは十分に理解していたため、あまり乗り気ではありませんでした。特に飲食店はハードな仕事のうえ、落ち込んだ経営を立て直すという大きな課題もありましたから。
しかし、私の息子が飲食店をやりたいと言い出していたこともあり、出資者という立場で事業を引き継ぐことを決断。息子が店舗運営やマネジメントを管理するという条件で、話をいただいてから1ヶ月でM&Aを決断しました。
買収に際して、譲渡側のオーナーから言われたことは、最低1ヶ月はレシピや作業内容、技術内容を継承することに専念し、それからさらに1年間は何も変えないという条件くらいでした。もともと、旧知の仲ということもあり、そのあたりはお互いの信頼関係を前提としてスムーズに運んだと思います。
しかし、コロナ禍が尾を引いていたこともあり事業を承継してから半年が経過してもなかなか結果が出ませんでした。
1年間は何も変えないという約束があったものの、長らく赤字が続く中で創業者の意思を守るというのは難しいことでした。実際に、てこ入れ施策として、当時SNSで人気があった玉子サンドや老若男女に広く受け入れられそうな人気のカツサンドの導入を社員に提案したこともありました。しかし、創業当時からのメニューを守りたいという現場スタッフの意見を尊重し、何も変えることなく運営を継続。
そのうちに、デリバリーという強みが生まれ、店の認知度が向上しました。何よりもコロナ禍が終わりを迎えたことなどが追い風となり、事業を受け継いでから3年で、念願の黒字化に成功しました。
Q: M&Aを考えるようになった理由を教えてください。
A:実は、1年目から店の売却を考えていました。
なぜなら、私と息子だけでは成長に限界があると考えていたからです。
ハンバーガー・サンドイッチという商材の欠点として、在庫を持てないという課題があります。冷凍や作り置きができないため、売上を拡大しようと思ったら、数を作るためのスタッフと場所を増やすほかないのです。
飲食業はお客様や注文の波が激しく、ピーク時に合わせて店やスタッフを用意してしまうと、膨大な固定費が発生します。また、人を増やすには社員教育とマネジメントを行う人材が新たに必要になりますし、時間もかかります。
それらの課題を解決して、店を大きくするだけの余力とモチベーションが我々には最初からないと判断していたため、店が黒字化したらこれからの成長を託せる相手にお譲りしようと最初から考えていました。
私が事業を引き継いだのも、前オーナーの店と社員を守るため。黒字化したら私の役目は終わったと考えていたのです。
Q:ジャパンM&Aソリューション株式会社との出会い、また、M&Aを進める上でのアドバイザーとしてジャパンM&Aソリューションを選んだ理由について教えてください。
A:ジャパンM&Aソリューション株式会社の代表の三橋さんが信頼に足る人物だったからというのが一番の理由です。もともと、学校の後輩でもあり、住んでいる地域も近かったことから交流はありましたが、M&Aの依頼をしたのは初めてでした。三橋さんの実直な性格ならきっといいお相手を見つけてくれるだろうという確信がありました。ビジネスの世界では最終的にはお金が重要ですが、それ以前に人間関係や信頼がなければ何も任せることはできません。
また、ジャパンM&Aソリューションが持っていた提携とのネットワークも決め手の1つです。
買われる側としては上場企業のように大きな会社のほうが絶対に安心できます。しかし、基本的に上場企業は自社でM&A部隊を持っているか、上場しているM&A仲介企業を選びます。そのため、中小規模のM&A仲介だと大手とマッチングすることすら難しいのです。
じゃあ、上場しているM&A仲介企業ならどこでもいいかと言われるとそうでもありません。上場しているM&A仲介企業が取り扱うのは最低成功報酬額である2000万、2500万円を支払える規模の会社だけ。1店舗しか持っていない飲食店ははなから対象外なのです。
一方で、ジャパンM&Aソリューションは最低成功報酬額が500万円とM&A仲介会社の中でも一番リーズナブルです。また、今回のご縁を見てわかる通り大手とのネットワークも有している。
ベイスにとってはうってつけの相談相手だったのです。
Q: 会社を任せたいお相手の条件はどのようなものだったのですか。
A:ベイスという店をもっと大きく広げていける相手がいいとお願いしました。資金力はもちろん、多店舗展開のノウハウがあることが絶対条件でした。
また、なかなか数字やデータではわかりにくい点ではありますが、従業員の個性を尊重してくれるという点もジャパンM&Aソリューション株式会社に強くお願いした点です。というのも、大人になっても遊び心を忘れずに楽しんでほしいという創業者の想いから「大人の秘密基地」というコンセプトでスタートしました。そのため、店舗に出るスタッフも髭やピアスにジーンズなどかなりラフな格好だったのです。
大企業でなおかつ、そういう雰囲気や個性を受け入れ、M&Aの後もそのスタイルをキープしてくれる会社がいいと。かなり、大変なお願いだったかもしれません。
あとは、前オーナーから言われた、メニューやレシピ、従業員の雇用を維持することくらいでしょうか。
そして、最初にご紹介いただいたのが株式会社インターコマース(現:コメダコマース)でした。インターコマースはコメダコーヒーのグループ企業で新規事業の開発を行っている会社です。私が希望していたこととはいえ、いきなり大手からのご紹介を受け非常に驚いた記憶があります。
私が提示した条件もほぼ全て呑んでいただける形で商談が進み、あっという間にトップ面談まで進みました。
幸いなことに、インターコマースの代表の○○さんとは非常に話が合いました。
私は自分のことを「感性先行型」と呼んでいますが、相手の人となりを判断する際に一番大切にしているのが第一印象。それは、ビジネスにおいても変わりません。
まず相手の人間性を見て、その上で合理的な条件が合うかどうかを判断します。一般的にはビジネスと自分の感覚を分けるべき、という考えのほうが主流かもしれませんが。私はそうではありません。
また、相手方の社内事情なども理解し、彼らの立場も考慮した対応を心がけたことがスムーズなM&Aにつながったと思います。
担当者は「社長」とはいえ、本社の意向や決裁を仰がなくてはならないわけです。そのため、本社へアピールしやすい材料を揃えておく必要がありました。
一番気を付けたのが譲渡金額です。「なぜこの金額なのか」という根拠がなければ社内プレゼンも難しいと思い、店の売上・利益を基に、3年間で買い手が投資額(譲渡金額)を償却できる額を設定しました。
不動産があるわけでもないビジネスのM&Aを成功させるためには、とにかく将来性をアピールする必要があります。黒字経営であり、経営次第ではもっと拡大が見込めること、経理・帳簿がしっかりしていること、マネージャークラスのスタッフがM&A後も残ってくれること…。
買い手にとってM&Aとは「投資」ですから、投資額以上のリターンが見込めることをプレゼンしたわけですね。私が見込んだ通り、私の提示額はそのまま通ったそうです。
あとは、M&A、特に売却を行う上で一番大切なことは最初に決めた条件を変えないことが大切ですね。
例えば、1000万円で売れると思っていた会社に2000万円のオファーがあったら「2500万円でも買い手がつくのではないか」そう考えてしまう経営者は少なくありません。しかし、そういうことが続くと買い手もいい気持ちはしませんし、拒否感もでてくるでしょう。
自分と人生を共にしてきた会社ですからどうしても高く評価して欲しい。そういう気持ちは非常によくわかります。しかし、買い手もビジネスですから選定眼は非常にシビアです。根拠のある数字を出すことが大事だと思います。
Q: 成約後の会社のご状況や、今のお気持ちについてお聞かせください。
A:スタッフにM&Aのことを伝えたのは、成約の直前です。2度目のM&Aということもあり、皆が上場企業への売却を喜んでくれました。
また、一番心配していた、コメダとベイスの社風の違いについては、コメダコマースのスタッフが契約成立前の約3ヶ月間から店舗に入ってくれ、十分に理解しあえた状態で引き継ぎを行ったため、スムーズな移行が実現できました。
一般のM&Aでそういうことがあるかどうかは知りませんが、コメダさん側の人が何ヶ月も前から入っていたことが一番良かったと思います。
Q:最後に、M&Aを検討されている会社にメッセージをいただけますか。
A:まずは相談することをお勧めします。
M&Aに慣れている経営者はまずいないでしょうし、正しい情報を集めるには専門の会社に話を聞くのが一番です。
また、M&Aをする・しないに関わらず自分の引退については相当前から考えておくべきでしょう。今回は運よく良い会社と巡り合うことができましたが、M&Aは一期一会ですから早くから準備するに越したことはないでしょう。
ベイス元社長の今井義博さん(左から3人目)、コメダコマース代表の北川直樹さん(左から4人目)、譲渡後、スタッフと一緒に
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