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石破新政権の経済政策(2024年10月11日)

本コラムでは、世の中で起こっている経済トピックスの中から当委員会の解釈で解説しています。
マクロ経済の視点からミクロのM&Aを始めとする経営活動にお役立ていただきたく掲載しているものです。
掲載している内容については、当委員会で知りえた情報に基づいた見解であり、
利用者個人の責任においてご判断下さるようお願いいたします。

ジャパンM&Aソリューション株式会社
JMA
経済トピック製作委員

 

石破新政権の誕生

 10月1()の国会で、石破茂自民党総裁が第102代内閣総理大臣に選出された。これに先立つ前週の927()に自民党の総裁選挙が行われたのだが、その日から翌週一杯までの数日間にわたり、株価や円相場が乱高下することになった。少し振り返ってみよう。

927日の総裁選では、高市早苗氏と石破氏との間で決選投票が行われたが、直前予想は高市氏の勝利だった。周知のように、高市氏の主張は「超低金利維持、積極財政」だから、相場は円安、株高に振れた。ところが市場の予想に反して、決選投票の結果、石破氏が勝利した。ただ、この結果が判明したのは株式市場がクローズした後だったので、27日の株価は急騰したまま(日経平均は前日比903円上昇)で終わっていた。一方、常時どこかで取引が行われている為替市場では、高市氏勝利と見て1ドル=146円台に急落(前日比2円以上の円安)していた円相場は、石破氏の勝利を受けて一転、142円台に急騰したのだった。

 相場の混乱は週明けも続くことになった。まず30()に日経平均が急落した(前日比1910円下落)。900円上昇した27日の翌営業日に1900円も下落したのはなぜか。900円は前営業日の反動だとすると、残り1000円は石破首相誕生の影響が大きいということになる。為替相場の方は前週のうちに円高に振れていたが、その水準が維持されたままだった。

 市場は、石破首相は「金利上昇容認派」だと見ていた。だからこそ27日のうちに相場が円高に振れたのだ。10月4日付の日本経済新聞(朝刊)によれば、石破首相は「5月の講演で『金利は上げていかなければ仕方ない』と明言し、9月5日には 『金利が健全に機能することが大事だ』と強調」している。ゆっくりだとはいえ利上げを始めた日銀のスタンスを容認している人だと市場が判断するのは自然だった。

石破首相は「はしごを外した」?

 ところが、ところがである。102日に植田日銀総裁と面談した石破首相は、直後(2日夜)の取材で、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「引き続き政府と日銀で密接に連携し、経済財政運営に万全を期したい」と発言したのだ。この発言自体は、9月に利上げを見送った日銀のスタンスと矛盾するものではないが、市場が抱いていた「石破像」からは想像できない発言だったため、直後の海外市場で円が一気に売られることになった。翌日3日の東京市場でも、円相場は一時147円台を付けるほどの円安となった。

 さらに、翌4日に米国で発表された注目の雇用統計が、市場の事前予想を上回る強さを示した。FRB9(18)0.5%と通常の2倍の幅で利下げしたのは、雇用の悪化を懸念したためだったのだが、その後に発表された実際の数字は強かったわけだ。そうなると、市場が予想している年内のあと2回の追加利下げについて、その予想される下げ幅が小さくなったり、利下げ自体が不要ではないかといった見方すら出てくる事態となった。結果は、もう一段の円安という動きになり、107日の週に入って148149円台で推移している。

経済政策は変わるのか、変わらないのか?

 さて、石破首相誕生直後の相場の乱高下が一巡した後、新首相はどんな経済政策を取り、相場はどう反応するのだろうか。「よくわからない」というのが大方の見方だ。自民党内で長年、反主流派という立場にあったから、そういう意味では忖度しない発言をしていてもよかったわけだ。しかし首相となれば違ってくる。これまでの主張が与党内でことごとく反発を受ける事態すらありそうだ。最近の政権(安倍、菅、岸田)と違って、官邸主導で政策を進めることは難しそうだ。就任早々、野党から言行不一致との批判を浴びせられていることを見ても、「党内世論に妥協して、自分の思いを修正せざるを得ない」新首相の苦しい立場が窺える。

 今年3月には、「週刊現代」のインタビューで、「総理になったら何に取り組むのでしょうか」と問われて、「金利引き上げだね。これはもうハードランディングするしかない。反発は凄いだろう。アベノミクスの否定になってしまうから。これを言えるのは(安倍さんと対立していた)俺しかいない」(「週刊現代」24316日)と答えている。取材の媒体にしろ、くだけたものの言い方にしろ、自由な立場で本音を語っている印象がある。自著でも、「異次元金融緩和によって元々抱えている病気が治るわけではない」と書いているようだ。経済評論家の発言なら全く問題ないし、賛同する部分も多いが、この考え方で与党の意見を集約するのは不可能だろう。

 ワイズスペンディング(賢い支出、健全財政)と地方創生(地方へのバラマキ?)は矛盾しないのか、アベノミクスを否定してデフレ脱却できるのか、金融所得課税を強化して資産運用立国は達成できるか。日米地位協定の見直しは米国が門前払いしそうだし、アジア版NATOの創設にはそもそもアジア諸国が乗ってこないのではないか。

 本来、誰が首相になろうと、取り組むべき経済政策は明らかだ。少子高齢化、つまり現役人口と被扶養人口の構成比の変化が今後も急速に進む中で、一人当たりの所得をどうにか増やしていくことが求められている。海外からの労働力への依存も不可避だ。また経済成長率が低い国では、所得分配の問題がいっそう重要になる。いつまでも、ひたすら財政赤字を増やしてバラマキを続けるわけにはいかない。こうした喫緊の課題にどう取り組むか、具体的にどんな政策を打つのか、大きな絵を描いて見せる必要がある。

 経済政策に強くないと言われている石破首相だが、国民としては期待し応援したい。とはいえ独自色を出そうとするたびに、ことごとく潰されてしまう懸念が拭えないのも正直な思いだ。これまで自らが批判してきた政策を踏襲するような事態に陥ることなく、日本経済を覚醒させてもらいたい。

 

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